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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)115号 判決

上告人 兵庫県知事

訴訟代理人 豊水道祐 外三名

被上告人 日本国有鉄道

訴訟代理人 鵜沢勝義 外三名

主文

原判決を破棄する。

本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理由

上告人指定代理人浜本一夫、同豊水道祐、同矢田敏夫、同片山忠司の上告理由について、

原判決は、被上告人日本国有鉄道(以下国鉄と略称する)の所有する本件土地が、自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)にいわゆる小作地たる農地と認めるべきものとしながら、日本国有鉄道法以下国鉄法と略称するを理拠として、国鉄の所有農地を自作農創設の目的に供するためには、自創法施行令一二条に則り国鉄総裁の認可を得なければならないから、右認可を得ていない本件買収手続は違法であるとした。

しかし、国鉄法六三条は、国鉄事業の高度の公共性に鑑み、道路運送法、電気事業法、土地収用法その他の法令の適用については、国鉄法又は別に法律をもつて別段の定をした場合を除く外、国鉄を国と、国鉄総裁を主務大臣とみなすものとしているけれども、右については、財政法、会計法、国有財産法等国の会計を規律することを目的とする法令を除外することも、また右六三条の明定するところである。そしてその趣旨とするところは、国鉄が事業目的をもつて活動する面においては国と同一視するけれども、国から独立した財産権の主体としての面においては国と同視しないということに存するものと解されるのである。また、自創法施行令一二条は、原判示のように同令一三条と性質を異にするものではなく、同条と共に国有農地を自創法の目的に供する場合の管理換及び所管大臣の認可に関する規定であり、国有財産の所管換に関する国有財産法の特別手続を定めたものであつて、国鉄法六三条にいう「国の会計を規律することを目的とする法令」中に含まれるものと解すべく、従つて右施行令の適用については、国鉄を国と、国鉄総裁を主務大臣とみなすことができないものといわなければならない。けだし、管理換とは、国有財産について一の行政庁から他の行政庁に管理権限を移すことに外ならないのであるから、管理換の前後において所有権の帰属の変動はないのであつて、すなわち、国とは別個独立の法人である国鉄から農林大臣への管理換は考えられないからである。してみると、自創法施行令一二条の規定は、国鉄の所有農地に適用する余地がないものというべく、論旨は理由があり、原判決には、国鉄法六三条及び自創法施行令一二条の解釈適用を誤つた違法があつて破棄を免れない。

よつて、さらに本件農地が、自創法五条五号にいわゆる「近く土地使用目的を変更することを相当とす農地」に該当するかどうかを審理するため、民訴四〇七条一項に従い本件を原裁判所に差し戻すべきものと認め、主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判官 小谷勝重 藤田八郎 池田克 河村大助 奥野健一)

上告理由〈省略〉

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